水にうつる月
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『殺生丸』第471話●慈悲の心
 読みたい方だけ「続きを読む」にお進み下さい。

 日記みたいに字数制限ないから凄い長いです。
 今さら言わなくても御存じでしょうが(苦笑)

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100. キング直々のご出馬とは恐れ入るね。

 広い屋敷中が静まり返った真夜中。
 客室のひとつの窓が静かに開き、まずは黒猫が、続いて青年が外庭を望む縁側に歩み出てきた。その場に腰を下ろした青年は、立てた片膝に乗せた腕に顎を置き、綺麗に手入れされた庭に目をやる。
 火の気のない庭先に青白い炎が立ち上ったのは直後の事だった。無言で見つめる青年の前で、炎が白い獣の姿に変化する。

「キング直々のご出馬とは恐れ入るね」
《お前が呼んだのだろう》
「そうだけどね。今の煌主から離れるとは思わなかったかな」

 憮然と答える獣に青年は口の端を上げる。

《この地で好きに出来るとでも?》

 獣の深紅の双玉が、ひたと青年に据えられる。それに肩を竦めた青年に獣の耳がぴくりと動く。

《……いい加減、我らにちょっかいを出すのは止めて欲しいのだが》
「残念ながら、それは聞けないな。お前達の存在は面白すぎる」
《物好きめ》
「その自覚はあるな」

 くすりと笑う青年の足下に黒猫が身を寄せる。小さな頭を包み込むようにして喉元を撫でると、気持ち良さそうにごろごろと鳴いた。

「俺が手を出す事で他への牽制になっているのは分かってんだろ。差し引きゼロとでも思って、我慢しておくんだな」
《煌主にそれが通じるとでも?》
「通じないか?」
《その身を選んだお前が悪い》

 自分の身体をしげしげと見下ろす青年の向かいで、獣の尾がぱさりと揺れる。

「まあ心配しなくても大人しくしててやるよ。充分に遊べたしな。……退屈させないでくれれば、だけどな」

 そう言って不適な笑みを浮かべる青年に、獣の口から鋭い牙がちらりと覗く。
 青年の中に潜むモノは本体の一部だった事もあり、爆発した煌主の力により一時的な封印状態にあった。準備が整い次第、本格的な術を施すが、いくら策を労じても獣と変わらぬ時を経たソレを完全に封じる事は難しい。
 それでも平凡な日々を過ごしていれば、本体からの影響を受ける事なく穏やかに過ごす事が可能だろう。しかし予定通りには行かない事を、獣もソレも知っていた。



+++++++++++++++++++++++++

100作目は「煌狼記」より。

最初「PROGRESS」の社長2人で書いていたけど、本編を確認したら辻褄が合わなかったのでボツ。まあ親父メインだったし……。

そして終わった、ついに終わった。
まだやらなくてはならない事があるけど、とりあえず寝ます。

……アップ時間、31日3時半。

99. 女王の逆鱗に触れたかな。(96の続き)

 肩に置かれた青年の手を勢い良く弾いた煌主は、振り返ると目の前の二人に声を荒げた。

「歯医者じゃないの、ここっ」
「そうだな」
「嘘つきっ」
「誰が? ここが『病院』としか言ってない。勘違いしたのはお前の方。ついでに来たがったのもお前」

 幼馴染みの指摘に煌主がぐっと返答に詰まる。さすがにさっきまでの自分を否定する事は煌主にも出来ない。

「……臭いしてないし」
「強めの結界を張って貰ったからな。でも、もういらないか」

 その言葉を合図に白い獣が結界を解く。そして塞いでいたドアの前から立ち上がり、煌主の足下に擦り寄る。
 初めて間近で目にした獣の姿に目を奪われるが、甘える様は普通の犬と何ら変わらない事に少なからず驚いた。

「うわ、歯医者の臭いがぷんぷんしてるよ。……皆と一緒になって騙すなんて酷いよ、ディル」

 室内に漂う薬品の臭いに眉を顰めながら、先ほどまで自分の感覚に目隠しをしていた獣を恨めしそうな目つきで煌主が見下ろす。

「煌狼は主の命令をほいほい何でも聞く家来じゃない。何が正しくて何が悪いのか、きちんと自分で判断出来る。自分の思い通りに動かなかったからって恨むのは失礼だぞ」
「分かってるよ、そんなこと」

 正論を述べる青年に感情を押さえた声音で答えた煌主は、廊下に跪き獣の白い身体に両腕を回して顔を埋める。

「……いつ?」
「何が?」
「車を降りる直前」

 何の事だか分からず聞き返す青年に代わり、幼馴染みが答える。

「ふーん」

 そう言ったきり、煌主は黙り込んだ。

「……なあ、もしかして女王の逆鱗に触れたかな」

 最初の怒りが嘘のように静まり返った煌主に、不安にかられた青年が幼馴染みに小声で泣きつく。善かれと思ってやった事だが、背中を向けて拒絶されると悪い事をしている気分になってくる。

「こんなんで本気で怒るほどバカじゃないですよ」

 青年の心配に考え過ぎと答えた幼馴染みは、座り込む煌主の頭にぽんと手を置く。

「いい加減、諦めて治療してもらえ」
「……歯磨きで治る」
「治らないから連れて来たんだよ」

 この後に及んで、まだ渋る煌主に苦笑いを浮かべながら幼馴染みが諭すように言う。
 それでもしばらくうーうー唸っていたが、抵抗もここまでと観念したのか、しぶしぶ立ち上がる。可哀想と思いつつも心を鬼にして、足取りの重い煌主を診察台まで誘う。
 椅子に横たわる煌主の表情は予想以上に堅く、本当に歯医者が嫌いなのが分かる。しかし放っておいても虫歯は治らない。
 せめて短時間で治療を終えてあげようと思いながら、白衣を羽織った。 


〈 了 〉


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99作目は「煌狼記」より。

90作目の続き。
視点4人目。
ここまで来たら別人にしておかねば。

さあ残り「ひとつ」だ!

……アップ時間、30日1時。

98. 王子が人質になってますけど。

「は? もう一回言ってみろ」
「だから『囚われの王子奪還大作戦スタートだっ!』って」

 何がきっかけだったのか。
 次から次へと芋蔓式に溢れ出してくる思い出でもう忘れてしまったが、社長室は1時間ほど前からプチ同窓会の場と化していた。
 ふらふらと移り変わる話題が辿り着いたのは、10年前のあの事件だった。

「待て、ちょっと待て。王子って、それ俺の事じゃないよな」
「ナニ言ってるんです、貴方の事に決まってるでしょうが」
「王子が人質になってますけど、と報告が入って大騒ぎだったんですよ」
「連呼すんな、気色悪い」

 怒鳴りながら擦った両腕には、本気で鳥肌が立っている。

「当時、私はまだ動けなかったので勇姿を拝む事は出来ませんでしたが、貴方の誘拐を知り奪還を決意して屋敷を出ていく彼の姿は見ています。あの後ろ姿は誰がどう見てもナイト、騎士でした! そんな場合じゃないのに格好いいと思いましたもん」
「あちらでの行動も格好良かったですよ。『これぞ、ボディガード』で、私を含め研究所の面々の羨望の的でしたから」

 ナイト呼ばわりされた上、格好いいと連呼されている男は同じソファに座っているが、そ知らぬ顔で紅茶を飲んでいる。額に青筋を浮かべている自分とは大違いだ。

「そのナイトが奪還に向かうんです。悪者に囚われているのは、姫じゃなければ王子でしょう」
「囚われって言うなっ!」
「じゃあ、何て言えばいいんですか」

 問い返されるとは思わなかったので、一瞬言葉に詰まる。
 しかし、ここで何も言えないと『囚われ』決定になるので、脳内をひっくり返して別の言い方を必死で探す。

「……幽閉?」
「1日もいなかったくせに」

 二人揃って呆れたように鼻で笑われカチンと来るが、他の言い方が思い浮かばない。苛立つ自分を無視して話はさらに進む。

「一応、正式な作戦名は他にありましたけど」
「じゃあ、そっちで話せよ」
「おひとり『大作戦だっ!』と高らかに叫んでいる方がいらっしゃって。その印象が強烈過ぎて焼き付いてしまって」
「ピッタリですからね。表現の上手な方だ」

 バカみたいに感心されている相手には、心当たりがあった。今も昔もそんな事を言いそうな研究員は、ひとりしかいない。

「あの野郎……」

 脳裏に浮かび上がる人物に、あらん限りの呪詛を吐く。小声で呟く内容に放送禁止用語が交じるせいか、隣が眉を潜めるが知った事じゃなかった。



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98作目は「PROGRESS」より。

本編を書いてから10年。
作中でも10年。

……アップ時間、29日3時半。

97. 姫はご機嫌麗しくない?
 表からではなく旧参道を通って訪ねた神殿では、自分に声をかけた青年が地元の酒を手にして待っていた。

「命様、まだ梅は咲いていないようですが?」
「咲いてる、とは言ってないぞ。そろそろだからどうだ、とは言ったが」

 押し付けてきたぐい呑みに酒を注ぎながら、青年はしれっと答えた。普通は見頃に誘うものだが、そんな事を言って「それならば」と開花させられても困るので、大人しく引き下がる。
 
「心配しなくても『花』なら他のが見られる」

 掃き出せない言葉と一緒にぐいと酒を煽る自分を意地の悪い微笑みを浮かべながら見ていた青年が、ついと表を指差した。青年の指し示す方に目をやると、正面の朱塗の楼門をひとりの少女がくぐり抜けて現われた。
 目にした瞬間に、その少女が噂の巫女姫である事は分かった。話は聞いていたけれど実物を見るのは初めてだったので、思わず腰を上げる。拝殿入口の柱にもたれ掛りながら目で追い掛けていると、少女がぴたりと動きを止めた。
 そしてゆるりと顔を巡らせ拝殿をしばらく見つめた後、すっと目を細めた。

「……巫女姫はご機嫌が麗しくないのですか?」
「何だ、いきなり」
「険しい表情をしていました」
「ああ、それは緊張してるだけ」
「緊張?」

 砂利音を立てながら社務所へ向かう後ろ姿は噂の大きさに比べて、まだまだ小さい。 

「中旬に『春季大祭』があるだろ。そこで浦安の舞をやる事になってる。……小さい頃から舞に苦手意識があってな」

 そう言いながら青年は楽しそうにくすくすと笑う。

「でも睨まれたような気がしたのですが」

 拝殿に向けた眼光は思いのほか鋭くて、息を飲むほどだった。

「顔見知りでもないお前の何に怒る? 仮に怒っているとしたら俺にだな」
「命様に? なぜです?」
「自分が大変な時に、呑気に知り合いを連れて来ているのが癇に触ったんだろう」
「それはまた……」

 子供らしい八つ当たりが微笑ましかったが、次の瞬間とんでもない事に気が付いた。

「それってつまり、私に気付いていたって事ですか?」
「そうじゃないと怒らないだろうが」

 青年は手酌で酒を煽りながら当たり前のように答えたが、とんでもない事だった。

「だって神気は押さえているのに」

 他の神にテリトリーに入ったら、人でいう気配『神気』を押さえる。境内に漂う気配に影響を与えないためと、神職につく者達の精神を乱さないためである。
 末端でも神に名を列ねる従者達に気付かれないのはさすがに無理でも、宮司達がこちらを察知する事はまずない。
 それなのに少女は一瞬でこちらに気付いた。

「それが巫女たる理由。OK?」
「……OKです」

 梅の代わりに見た『花』は久しぶりに自分に驚きを与えた。きっと次に訪れた時は別の驚きがあるだろう。
 それがどんなものなのか。
 『花』がどのように成長していくのか。
 長い時の中、楽しみがひとつ増えた事が今回の訪問の最大の収穫だった。



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97作目は「亀甲天神」より。

年度内、3月中に終わらせる事が目標なので「1作書き終えるまで調べもの以外でネット接続しない」という『縛り』を発生させた。
今日はプラス「ゼロサム読書禁止」も(苦笑)

……アップ時間、29日。

96. 逃亡ごっこはもうおしまいか?(90の続き)

 ドアを開けた婦人の後を、何も知らない若様がうきうきした足取りで着いていく。それに続いてドアをくぐると、そこは短い廊下になっていた。

「この『スタッフオンリー』は看護婦さんの休憩室ですか?」
「……ええ。定休日だったら中をお見せ出来たんですが」

 すぐ右側のドアの前に立ち止まった若様に、婦人が申し訳なさそうに答える。

「あ、いいです。お邪魔したくありませんから」

 恐縮する婦人に慌てて顔の前で手を振り、再び歩き出した若様が興味を示した部屋の中には複数の気配があった。つかの間の休憩時間を楽しんでいるスタッフがいるのだろう。
 そんなところにドカドカと入り込むのは迷惑以外の何物でもないし、これからの事を考えると悪印象を与えたくなかったので、若様が辞退してくれて助かった。

「この先が治療室になっています」

 そう言いながら婦人がドアを開くと、独特の臭いがさらにきつくなった。しかし相変わらず若様は気付いた様子がなく、作戦は順調に進んでいる。
 進む廊下の真正面には都合良く衝立があり、そこに置かれたものを隠していた。見てしまえば一発でここがどこだか分かってしまうので、意図したわけではないだろうがナイスな配置に小さく握り拳を作る。

「そろそろですね」

 背後にいる若様の幼馴染みの言葉に頷き、前を行く後ろ姿を眺めながらカウントダウンを始める。意気揚々と歩いていた足がぴたりと動きを止めたのは、カウントが「3」になった時だった。
 衝立の裏側を目にして、ここがどこだか悟った若様の表情が強張る。どうするのかと壁に凭れて窺っていたら俺達の居場所を素早く確認し、次の瞬間ひらりと椅子を飛び越えると、入ってきたドアへと向かって一目散に駆け出した。
 制止がかからない逃亡劇は一見成功するように見えたが、行き止まりはすぐそこにあった。

「そこ、退いてぇ」

 聞こえてきた若様の悲鳴にゆっくり現場に向かえば、外へと繋がるドアの前には純白の毛に被われた大きな獣が優雅に横たわっていた。

「そこにいたら通れないから。ね、お願いだから立って、ディル」

 両手を合わせて拝むように頼む若様をちらりと見上げた獣だったが、深紅の目はすぐに閉じられた。半身の拒絶に声にならない叫びを上げている若様の肩にゆっくりと手をかける。

「逃亡ごっこはもうおしまいか?」

 びくりと反応する背中が意外に楽しくて、このゲームにはまりそうだった。


< 99作目に続く >


+++++++++++++++++++++++++

96作目は「煌狼記」より。

90作目の続き。
視点3人目。

……アップ時間、27日0時台。

95. 会いに行くよ。

「では、そろそろ出かけるとしましょうか」
「なぜ貴様らなんかと一緒に行動せにゃならんのだ」
「えー、りんは楽しいけど邪見さまは違うの?」
「楽しいわけあるか、あほっ! 犬夜叉の仲間なんぞと……狼藉を働く暴力法師はおるし」
「何か言ったか、ああ?」
「えっ? いや、わしは何も」
「弥勒。遊ぶのはその辺にして出かけんと、いつまでたっても犬夜叉達に追い付かんぞ」
「それもそうですな」
「誰が遊んでおるっ」
「正しくは遊ばれておった、じゃな」
「ぐっ。刀々斎、きさま……」
「ほれ、さっさと龍に乗らんと置いてかれちまうぞ」
「用意出来た? じゃあ、あの傍迷惑な兄弟を探しに行きましょうか」
「かごめさま、『探す』じゃないよ」
「りんちゃん?」
「りんは殺生丸さまを『探したい』んじゃなくて『会いたい』の。だから会いに行くの」
「……そっか。そうだね。私も犬夜叉に会いたいな」
「女子にあんな風に言ってもらえるとは羨ましい兄弟ですな」
「おぬしには珊瑚がおるじゃろうが」
「それとこれは違うのですよ。女子が自分を追いかける、男のロマンじゃないですか」
「そうか?」
「七宝も大人になれば分かりますよ。いでっ」
「……どうやら分かっても良いことはなさそうじゃな」
「痛いじゃないですか、珊瑚」
「自業自得でしょうがっ。行こう、かごめちゃん」
「うん」



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95作目は「犬夜叉」より。

そういえば「会話オンリー」は書いてないな、と人様のを読んで思ったので。書いてない、よな?

映画3「天下覇道の剣」の途中。
登場人物は「弥勒・邪見・りん・七宝・刀々斎・かごめ・珊瑚」なんだけど、どれが誰だか分かります?

……アップ時間、26日。